介護保険を申請すれば安心だと思っていませんか?
「介護保険を使えば安心ですよね」
これは、親の介護相談を受ける中で非常によく耳にする言葉です。
確かに、介護保険は高齢者や家族を支える大切な制度です。
しかし、申請しただけで安心できるケースは、実はそれほど多くありません。
特に認知症の場合、
「制度が入った=生活が安定する」とは限らないのが現実です。
アルツハイマー型認知症と診断された家族からの相談
今回ご相談を受けたのは、ある企業に勤める従業員の方でした。
お父さまが転倒したことをきっかけに病院を受診し、
「アルツハイマー型認知症」と診断されたそうです。
診断後、貼り薬(認知症対策の薬)が処方され、
今後は介護保険の申請を進める予定とのことでした。
ご家族の表情からは、
「診断もつき、制度も使える。これでひと安心」という空気を感じました。
しかし、私はそこで強い違和感を覚えました。
自宅に戻った時の現状
診断後、医師からは
「アルコールは少量であれば問題ない」
という説明があったそうです。
すると、お父さまは自宅で焼酎を作ろうとしました。
途中で作り方を忘れてしまう場面はあったものの、
なぜか最後まで作業を進めてしまう。
ご家族は
「忘れているはずなのに、意外と何でもやってしまうんです」
と話されていました。
焼酎の作り方を忘れても動けてしまう認知症の現実
このエピソードは、
認知症の現実を非常によく表しています。
認知症=何もできない
というイメージを持つ方は多いですが、実際にはそうではありません。
- 手順は思い出せない
- でも身体は動く
- 危うさと可能性が同時に存在する
この「できる部分」と「できない部分」が混在する状態こそ、
家族が最も判断に迷う時期でもあります。
5. 介護保険サービスの内容と利用できる時間の実態
介護保険で利用できるサービスには限りがあります。
認知症で、なおかつ夫婦二人暮らしの場合、
主に選択肢となるのは以下です。
- デイサービス
- 訪問ヘルパー
- 福祉用具
デイサービスは、1日数時間程度。
訪問ヘルパーは、1回あたりおよそ45分前後です。
つまり、1日の大半は自宅で過ごす時間になります。
6. デイサービスと訪問ヘルパーだけで本当に安心できるのか
多くの方が、
「サービスが入る=見守ってもらえる」
とイメージしています。
しかし実際には、
サービスのない時間帯の方が圧倒的に長いのです。
- 家の中でどう過ごしているのか
- 身体を動かしているのか
- 誰とも会話せず過ごしていないか
これらは、介護保険だけではカバーできません。
認知症でも残っている「できる力」をどう考えるか
「まだ、自分でもできる」という、安心感だけでは、本当は
危険なのかもしれません。
しかし、この力を
- 危ないからすべて止めるのか
- どう安全に活かすのか
この判断が、
その後の生活の質を大きく左右します。
介護申請後にこそ大切な「自宅での過ごし方」
介護が始まると、
生活は「できない前提」で組み立てられがちです。
介護サービス=お世話が中心だからです。
デイサービスの多くは「レスパイト」と言って、家族が休息する時間
それは、お預かりという意味合いがあります。
しかし、「機能訓練やリハビリをしています」というデイサービスも多くありますが
成果につながるサービスではありません。
たった、10分でも運動をすれば機能訓練でもある。
しかし、週に2日前後デイサービスの機能訓練で身体が「維持及び向上」するなら
こんなに高齢者問題が深刻になってはいないはずです。
そこで、重要になるのが
介護申請後こそ、自宅でどう過ごすかが重要です。
- 毎日少しでも身体を動かす
- 役割を失わせない
- 家族が「できる部分」に目を向ける
こうした視点が欠けると、
制度を使っていても安心とは言えない状況になります。
介護保険に頼りきらないという選択肢
介護保険は、必要不可欠な制度です。
しかし、それだけに頼るのではなく、
制度の外にある時間をどう支えるかが問われています。
認知症と診断されたから終わりではありません。
自宅で、どう生きるか。
どこまで力を引き出せるか。
その視点を持つことが、
本当の意味での「安心」につながるのではないでしょうか。