「もう会えないかもしれない」という予感
2025年12月末。私の元に一通の連絡が入りました。 「母が入院したので、しばらくお休みします」 送り主は、13年という長い年月、毎週欠かさず私の運動指導を受けてくださっている93歳の女性のご家族でした。
正直に申し上げます。36年という長い間、身体のメカニズムと向き合ってきた私でさえ、一瞬、胸をよぎるものがありました。93歳というご年齢での入院。「もしかしたら、もう二度とお会いできないかもしれない……」そんな不安が、頭の片隅をかすめたのです。
しかし、その不安を鮮やかに裏切ってくれたのは、ご本人でした。
1月末、私のスマートフォンにその方から直接連絡が入ったのです。「また、よろしくお願いします!」と。 驚きと同時に、深い感動がこみ上げました。93歳にして、入院というブランクを経ての復活。これは決して「運が良かった」わけではありません。そこには、彼女の中に確立された**「成功体験」**があったからです。
身体の奇跡を信じられる「成功体験」の強さ
彼女が私と出会った13年前、きっかけは「急にトイレで歩けなくなったこと」でした。 その時の恐怖から、彼女は「身体のケアを真剣にやりたい」と決意されました。そこから10年以上の間、運動習慣と温熱療法を継続してきた結果、彼女は自分の身体が刺激に反応し、良くなっていくプロセスを知っていたのです。
今回の入院中も、彼女の心の中には迷いがなかったはずです。 「頑張れば、またあの日々に戻れる」 「私の身体は、動かせば応えてくれる」 この強い信念こそが、あったからこそ再び「運動しよう」「温熱で身体をケアしよう」そうすれば、家族に迷惑をかけずに自宅で暮らし続けられる。という「覚悟」のがあったからだと思います。
なぜ、周囲の「思いやり」が身体を休眠させてしまうのか
ここで、今の日本で当たり前のように行われている、ある「すれ違い」についてお話ししたいと思います。 親の足元がおぼつかなくなったり、体調を崩したりしたとき、周囲の家族はこう言います。
「もう歳なんだから、無理しないで」 「危ないから座っていて。じっとしていて」
これらは一見、相手を尊重した思いやりに見えます。しかし、身体のメカニズムから見れば、これは「安静という名の活動停止」を勧めているようなものです。 多くの方は、「身体は年齢に関係なく、適切な刺激(セルフリハビリ)で、再び呼び覚ますことができる」という事実を知りません。
いえ、知らないのは仕方のないことかもしれません。 なぜなら、かつての私自身がそうだったからです。
「覚悟」を決めた日から、運命は変わる
私の祖母が94歳で寝たきりになったとき、私も絶望の淵にいました。 「このまま、家族の誰かが付きっきりで支える生活が続くのだろうか」 しかし、私は覚悟を決めました。
リハビリは身体を動かすこと、それなら私にも知識と経験があるからできる。そう思い、ベッド上でできる筋トレを考案して、当時74歳の私の母にやり方を教えました。
毎日、根気強く運動を続けました。周囲からは「そこまでしなくても」と思われたかもしれません。しかし、結果として祖母は自分の足で再び、歩けるようになったのです。
誰もそこまでやろうとしません。 「できない」と思い込んでいるからです。 「歳だから」という言葉で、希望に蓋をしてしまっているからです。
これが、今の日本が抱える、目に見えない大きな壁です。 50代前後の皆さんに知ってほしいのは、親の自立を守るのは、高価な設備でも、誰かに頼り切るサービスでもないということです。
それは、「いくつになっても、身体は刺激を与えれば応えてくれる」という知識と、「親自身の人生を諦めない環境づくり」です。
「自分の人生を諦めないために」親子でできること。
「親のために」という言葉を聞くと、どこか自己犠牲的なイメージを持つかもしれません。仕事をセーブし、趣味を封印し、尽くすことが正しいとされる風潮もあります。
しかし、私は提案したいのです。 本当の親孝行とは、親自身が「最後まで自分の足でトイレに行ける、自分の足で行きたい場所へ行ける」状態をサポートすること。
そして、それによって子である私たちも、自分の仕事や趣味を、何ら変わらずに楽しみ続けることではないでしょうか。
私のプログラムでは、管理栄養士としての栄養管理と、36年の運動指導、そしてコーチングを組み合わせた「一生歩ける身体づくり」を提唱しています。これは単なるトレーニングではなく、親子で手に入れる「自由への切符」です。
「もう歳だから」と諦める前に、まずは一歩、踏み出してみませんか。 私のクライアントの93歳の女性が証明してくれたように、そして私の祖母が94歳で証明したように。 人間の身体には、私たちが想像している以上の底力が眠っています。
その力を引き出すのは、周囲の「正しい知識」と、本人の「歩きたい」という意志、そしてそれを支えるプロの技術です。
親子でいつまでも笑って、外の空気を吸いに行ける未来を、今から一緒に作っていきましょう。